先日、年商10億規模の不動産会社を経営するS社長から、こんな連絡がありました。
「先生、去年のふるさと納税、100万円やっていたんですが、もっとできましたか?」
決算書を確認したところ、S社長の昨年の所得から計算すると、ふるさと納税の上限は約480万円。やっていた100万円との差額は380万円。自己負担2割を考慮しても、76万円分の返礼品を受け取れる権利を丸ごと捨てていた計算になります。
「そんなにできるとは思っていなかった」というS社長の一言が、この記事を書くきっかけになりました。高収入の社長ほどふるさと納税で損しているケースが多い。その理由を3つにまとめてお伝えします。
3位:「ワンストップ特例」は、実は社長には使えない
ふるさと納税の手続きとして広く使われている「ワンストップ特例制度」。確定申告なしで控除が受けられる便利な仕組みですが、年収2,000万円超の方には最初から適用されません。
そもそも年収2,000万円を超えると確定申告が義務になりますが、確定申告をした時点でワンストップ特例は自動的に無効になる仕組みです。つまり、ワンストップ特例を申請しておいても、確定申告でふるさと納税の寄付金控除の記載を忘れると、控除がまるごとゼロになってしまいます。
「ワンストップ特例を申し込んだから大丈夫」と思って確定申告でスキップしてしまうケースが、相談の中でも少なくありません。社長は必ず確定申告でふるさと納税を申告する、という習慣を今すぐ徹底してください。
2位:上限額を「100万円くらい」と感覚で決めてしまう
ここが一番もったいないポイントです。
ふるさと納税の上限額は住民税の約20%が目安ですが、年収が上がるほど上限も大きく跳ね上がります。年収1億円の社長の場合、上限は500万円を超えることもあります。
「さすがにそんなに使えないでしょ」と思われるかもしれませんが、返礼品は米・酒・肉・家電など生活で普通に使えるものばかり。仮に500万円分を寄付しても、自己負担は2,000円×寄付先自治体数の少額で済みます。節税効果として考えると、上限をフルに活用しないのは明らかな機会損失です。
年収2億・3億の社長なら上限はさらに上がります。「だいたいこれくらい」という感覚値で放置せず、毎年税理士に上限額を確認する習慣をつけてください。
1位(最大の損失):所得が急増した年を見逃す
これが最も取り返しのつかないミスです。
不動産や株式を売却した年は、その年だけ所得が大幅に増えることがあります。たとえば、20億円の不動産を売却して大きな譲渡益が出た年は、ふるさと納税の上限も通常の何倍にも跳ね上がります。
ただし、ふるさと納税の寄付は「その年の12月31日まで」しかカウントされません。
翌年になってしまえば、もう間に合わない。売却年の年末が近づいているなら、今すぐ税理士に上限額を計算してもらい、残りの枠を使い切ることを真剣に検討してください。この「一度きりのチャンス」を見逃している社長が、本当に多いのです。
チェックリスト:今すぐ確認すること
この3つだけ頭に入れておいてください。
- ワンストップ特例は社長には効かない。確定申告で必ずふるさと納税を記載する
- 上限額は毎年確認。年収・所得が変わるたびに数字が動く
- 今年、大きな売却があるなら年内に動く。翌年に持ち越すと控除はゼロ
ふるさと納税はやり方を間違えなければ、コストほぼゼロで年間数百万円分の返礼品を受け取れる制度です。「なんとなくやっている」状態から卒業して、今年は上限額をしっかり計算した上で活用してみてください。まだ税理士に上限額を確認したことがないなら、今期の決算前に一度相談することをおすすめします。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。