先月、飲食チェーンを経営するある社長から、こんな相談がありました。

「顧問税理士から『今期の利益が大きいから、オペレーティングリースを使いましょう』と言われました。1億円以上の経費が落とせると聞いて、すぐ契約しようと思っているんですが……本当に大丈夫ですか?」

正直に答えます。大丈夫かどうかは、5年後の出口をどう設計するかによります。

1億円が経費になる仕組み

オペレーティングリースとは、航空機や船舶といった大型資産を複数の法人が組合形式で共同取得し、そのリース料収入を得る仕組みです。

リース開始後の初期数年間は、減価償却費がリース料収入を大きく上回るため、組合として多額の「損失」が発生します。この損失を出資割合に応じて各社が取り込み、法人税上の損金(経費)として計上できる——というのが節税の理屈です。

1億円を出資すれば、1億円超の損金を1〜2年以内に計上できるケースもあり、利益が膨らんだ期の「決算前節税」として根強い人気があります。

ただし、これは「節税」ではありません

ここが最大の落とし穴です。

オペレーティングリースは、税金をゼロにするわけではありません。正確には課税の先送りです。

初期に大量に計上した損金は、リース満了時(通常5〜7年後)に、ほぼそのまま「益金」として跳ね返ってきます。1億円の損金を取り込んだなら、満了時には1億円超の益金が一気に計上される——これが「5年後の落とし穴」の正体です。

たとえば今期、利益1億2,000万円をオペレーティングリースで打ち消したとします。法人税率を約30%とすると、今期は3,600万円の節税効果が出ます。しかし5年後、1億2,000万円の益金が戻ってくる。そのとき事業利益もプラスなら、税負担が一気に重なります。「結局、払う税金は変わらない」どころか、利益が上乗せされた分だけ総税額が増えるケースすら起こり得るのです。

退職金かM&Aか——出口戦略がセットで必要な理由

では、なぜ節税策として普及しているのでしょうか。

答えは「出口戦略と組み合わせれば、確かに機能する場面がある」からです。

5年後の益金計上タイミングに合わせて、次のいずれかを用意できるなら話は変わります。

  • オーナー経営者の退職金:退職所得は分離課税で税率が優遇されるため、益金との相殺に活用できます
  • M&Aによる売却:株式譲渡で会社を手放すと、帳簿上の益金は引き受け先に引き継がれます
  • 大型設備投資・修繕費:5年後に確実に大きな損金が発生するならば、相殺効果が見込めます

逆に言えば、こうした出口が何も決まっていない状態でオペレーティングリースを組むのは、5年後の自分への時限爆弾を埋めることと同じです。「そのときにどうにかなるだろう」は、絵に描いた餅になりがちです。

「組合型スキーム」に潜む、もう一つのリスク

見落とせない注意点がもう一点あります。組合形式で運営されるオペレーティングリースは、運営会社の信頼性が命綱という点です。

正規の国際商品であれば問題ありませんが、実態のない資産を組み込んだ詐欺的な商品や、事実上中途解約できない設計になっているものも市場に出回っています。「節税になります」という一言だけで契約し、スキームの詳細を把握しないまま多額の損失を被るケースは後を絶ちません。

契約前に最低限確認すべきことは、組合が実際に保有・管理する資産の内容、運営会社の財務状況と実績年数、中途解約の条件と違約金、そして満了時の益金還流についての具体的な試算です。提案した税理士や金融機関任せにせず、第三者の目で検証することを強くお勧めします。

使うなら、5年後から逆算して設計する

オペレーティングリースを完全に否定するつもりはありません。出口戦略と組み合わせることで、キャッシュフローの平滑化や事業承継の文脈で有効に機能するケースは確かに存在します。

ただし、「今期の利益が出たから、とりあえず節税」という発想で飛び込むのは危険です。5年後の会社の姿——経営者の退職時期、M&Aの可能性、大型投資の計画——を先に見通したうえで、益金が戻ってくるタイミングの出口を設計してから決断してください。

「5年後に何で相殺するか」の答えが出ないうちは、契約を急がないのが賢明です。その答えを一緒に考えてくれる税理士が、あなたには必要です。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。