先日、ある社長からこんな連絡が届きました。「6月に届いた住民税の納税通知書を見たら、金額が年間320万円でした。去年も同じ衝撃を受けたのに、結局何もしなかった自分が情けない」と。

年商8億規模のサービス業を経営する50代のその社長は、役員報酬を年間2,000万円に設定していました。業績が安定していたこともあり、長年この金額のまま来ていたそうです。ところが毎年6月になると、分厚い封筒が届く。「まあ仕方ない」と口には出しながら、心の中では何とかしたいと思い続けていた、とおっしゃっていました。

この話、決して他人ごとではありません。役員報酬が1,500万円を超えるなら、住民税だけで年間150万円前後になることも珍しくありませんし、2,000万円台に乗れば200〜300万円に達することも十分あり得ます。

住民税が「後払い」である本当の怖さ

まず押さえておきたいのは、住民税が「前年の所得をもとに計算される」という仕組みです。

今年(2026年)6月に届く通知書は、2025年1月〜12月の役員報酬をもとに算出されたものです。つまり今期に入ってから業績が変化しても、今年の通知書の金額はもう変わりません。そこが所得税との大きな違いです。

さらに厄介なのは、翌年の住民税も「今期の役員報酬」に連動するという点です。今期の設計を放置したまま年を越せば、来年の6月もほぼ同額の通知書が届きます。後払いの税金は、打てるタイミングを逃すたびに一年分丸ごと損をする構造になっています。

実質55%が消える「複合税率」の現実

所得税の最高税率は45%です。これに住民税の10%が上乗せされると、課税所得の高い部分には実質55%の税負担がかかります。

役員報酬2,000万円の社長の場合、手取りは概算で1,000万円を下回ることも珍しくありません。さらに社会保険料の事業主負担まで含めると、会社が払い出しているお金と社長の実際の手取りのギャップはさらに広がります。

「稼いでも稼いでも税金で持っていかれる」という感覚は、気持ちの問題だけでなく、数字の問題でもあります。ただ、この税率は「現行の設計」に対してかかるものです。設計を見直せば、話は変わります。

今期中に動けば、来年の通知書が変わる

住民税の後払い構造は厄介ですが、裏を返せば「今期の行動が来年の通知書を変える」とも言えます。

役員報酬の見直しは、そのなかでも最もシンプルな手段のひとつです。報酬額を下げれば、来年の所得税・住民税の課税ベースが下がります。ただし個人の手取りが減るだけでは意味がないため、法人側で役員のために活用できるお金(社宅、出張旅費規程、法人保険など)とセットで設計し直すことが重要です。

もうひとつ、役員報酬が高い経営者が見落としがちなのが「持株会社(ホールディングス)の活用」です。事業会社の株式を持株会社が保有する構造にすることで、配当の流れを変えたり、グループ内の資金移動を税務的に最適化できるケースがあります。設立・維持コストが発生するため万能ではありませんが、役員報酬が高水準の場合は一度シミュレーションしてみる価値があります。

重要なのは、いずれの対策も「今期中」に動くことです。役員報酬は、原則として事業年度の開始から3か月以内に決定した定期同額給与でないと損金算入が認められません。期中に気まぐれに変更すれば、むしろ税務リスクが生じます。来年の通知書を変えたいなら、今が動き時です。

「顧問税理士に任せている」では足りない

「顧問税理士がいるから対策は任せている」という社長も多いのですが、税理士は基本的に「依頼されたことに応えるプロ」です。社長側から「役員報酬を見直したい」「持株会社を使えないか」と声を上げなければ、自発的に提案してくれるケースばかりではありません。

役員報酬の設計変更は、会社の資金繰りや銀行融資の評価にも影響するデリケートな領域です。顧問税理士がリスクを恐れてあえて触れないというケースも、実際にはあります。

だからこそ、6月に通知書が届いたこのタイミングで、社長のほうから一言問いかけてみてください。「今期中に来年の住民税を下げるために、何かできることはありますか?」と。その問いかけが、来年6月の衝撃を変える第一歩になります。

役員報酬の設計を一度も見直していないなら、今期中に必ず確認しておくことをお勧めします。6月の通知書を見て「また来年も同じか」と感じたその気持ちを、行動のエネルギーに変えてください。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。