先日、ある資産家の経営者からこんな相談を受けました。
「PEファンドに個人で出資していたら、今期1億円の利益が出そうで。税金、どのくらい持っていかれますか?」
計算してみると、思った以上に重い数字が出てきました。個人で受け取ると総合課税の対象となり、実効税率は最大で約50%。1億円の利益のうち、約5,000万円が税金として消えてしまう計算になります。
「そんなに取られるんですか…」と絶句した彼に、私はこう続けました。「でも、手の打ち方によっては、税率を半分近くまで下げる方法があります」
なぜ個人だと税率が50%近くになるのか
PEファンドからの分配益は、ファンドの設計によって異なりますが、多くの場合「雑所得」や「事業所得」として総合課税の対象になります。
日本の所得税は累進課税なので、所得が高くなるほど税率が上がります。1億円もの利益が乗ってくれば、最高税率45%に住民税10%が加わり、実効税率は50%前後に達することも珍しくありません。
1億円稼いで5,000万円近くが消えてしまう。感覚的にはかなりキツい話ですよね。これを合法的に圧縮する手段が「法人格の活用」です。
法人を通すと、税率が34%まで下がる
持株会社や投資会社(資産管理会社)を設立し、その法人を通じてPEファンドに出資する形に変えると、状況が大きく変わります。
法人の実効税率は現状おおむね34%前後です。個人の最大50%と比べると、一気に16ポイントほどの差が生まれます。1億円の利益なら、この差だけで約1,600万円の節税効果があります。
さらに法人内に利益を留保しながら、経営者の役員報酬を調整したり、事業上の経費を活用したりといった余地も生まれます。個人でそのまま受け取ってしまうと、こうした選択肢が一切なくなってしまいます。
ストラクチャーを設計すると、さらに25%前後まで圧縮できる
法人を通すだけでも効果は大きいのですが、さらに投資ストラクチャーの設計を工夫することで、実効税率を25%前後まで圧縮できるスキームが存在します。
具体的な方法は個々の状況によって異なるため一概には言えません。ファンドの形態(LPS形式かどうか)、利益の性質、法人の種類、出資スキームの組み方など、複数の要素が絡み合います。国際税務の専門家と連携して設計する領域です。
ただ、結果として何が起きるかは明確です。1億円の利益に対して、設計なしでは約5,000万円の税負担、設計ありでは約2,500万円前後という試算になる場合もあります。その差、2,500万円以上。税理士への報酬などコスト面を差し引いても、十分すぎるほど割に合います。
「あとから法人を作ればいい」は通じない
ここで一つ、見落としがちな落とし穴があります。タイミングの問題です。
PEファンドへの出資は、個人名義で一度入ってしまうと、その後に法人を設立しても遡って適用することはできません。「利益が出そうになったら法人を作ればいい」という発想では、ほとんどのケースで手遅れになります。
出資前の段階で、「個人でいくか、法人でいくか」を設計しておく必要があります。PEファンドへの参加機会が来たとき、その場で考えるのでは間に合わないことも多いのです。
税務署は教えてくれない、だからこそ早めに動く
少し意地悪な言い方をすると、税務署はこの仕組みを積極的に教えてはくれません。知っている人が専門家に相談して、初めて活用できる話です。
PEファンド投資を検討している、または現在個人名義で出資しているという経営者の方は、一度「法人経由での出資に切り替えられるか」「既存の出資分をどう最適化できるか」を、国際税務や資産税に詳しい税理士に聞いてみることをお勧めします。
1億円規模の投資が絡む話なら、設計一つで手元に残るお金が2,000万〜2,500万円以上変わってきます。知っているかどうかだけの差で、結果が大きく変わってしまうのが税務の世界です。次の出資機会が来る前に、一度専門家に相談しておくのが得策です。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。