先日、ある社長からこんな相談を受けました。

「今期、利益が1億円ほど出そうなんだけど……正直、税金がいくらになるか考えたくない」

製造業を営む50代の社長です。業績は好調で、本来なら喜ぶべき話です。でも、決算が近づくにつれて顔が曇っていく。その気持ち、わかる方も多いのではないでしょうか。

利益1億円に対して法人税は実効税率にして約34%。つまり、約3,400万円が税金として持っていかれます。手元に残るのは6,600万円。稼いだ利益の3分の1以上が、何もしなければそのまま消えてしまうわけです。

「何かいい方法はないか」と聞かれたとき、私が最初に紹介するスキームのひとつが、オペレーティングリースです。


「損失を買う」という発想

オペレーティングリースとは、航空機や船舶、コンテナといった大型資産を、複数の法人が共同で出資してリースする仕組みです。

聞き慣れない言葉かもしれませんが、要は「大きな減価償却費を自社の損失として計上できる仕組みに出資する」と思ってもらえばいいでしょう。

仕組みの核心はここです。航空機などは取得直後に価値が大きく落ちるため、会計上の減価償却費が初年度に集中します。出資者である法人は、その減価償却費を自社の損失として取り込める。結果として、1億円を出資すると初年度に8,000万円超の損失が計上できるケースもあるのです。

利益1億円と損失8,000万円を相殺すれば、課税所得は2,000万円まで圧縮されます。支払う税金は大幅に減り、キャッシュを手元に残したまま次の投資や経営に使えるようになる。これが「知っている社長」がやっていることです。


繰り延べであって、免除ではない

ここで正直にお伝えしておきたいことがあります。

オペレーティングリースはあくまでも「課税の繰り延べ」です。税金がゼロになるわけではありません。

リース期間は通常5〜8年。その間は損失計上で税負担を抑えられますが、リースが終了して資産を売却すると、今度は利益が発生します。そのタイミングで、先送りしていた税金が戻ってくるのです。

では、そのとき課税されてしまうなら意味がないのでは?と思うかもしれません。

そうではありません。ポイントは「そのときまでに別のスキームで吸収できる」という点です。たとえば、リースが終わる5〜8年後に合わせて役員退職金を支払うというのは、よく使われる王道の組み合わせです。退職金は損金算入でき、かつ税率も優遇されているため、戻ってくる課税を吸収する器として機能します。

今の税金を将来に送り、その間にキャッシュを手元で運用しながら、出口も別の節税策で塞ぐ。この「時間差作戦」こそが、オペレーティングリースの本質的な使い方です。


誰でも使えるわけではない、という現実

ただし、このスキームには大きな前提条件があります。

出資の最低ラインが、数千万円から1億円以上というのが一般的です。つまり、ある程度の規模感がないと使いにくい手法であることは最初に理解しておく必要があります。

また、出資するファンドによって損失の計上割合やリスクの性質も異なります。航空機リースであれば航空会社の経営状況、船舶リースであれば海運市況など、事業リスクを伴う投資であることも忘れてはいけません。

節税効果だけを見て飛びつくのは危険です。「損失が計上できる」という響きに引っ張られて、中身をよく確認しないまま出資してしまうケースも実際にあります。

投資としての中身を見た上で、節税効果があるかどうかを評価する。この順番を間違えないことが大切です。


今期の利益が見えてきたら、動くのは早いほどいい

決算ギリギリになって「何か節税できないか」と焦っても、オペレーティングリースのような大型スキームは間に合わないことがほとんどです。出資の手続きや書類準備に時間がかかるため、決算の2〜3ヶ月前には動き出している必要があります。

今期の着地が見えてきたタイミングで、一度専門の税理士に相談を持ちかけてみてください。利益の規模、会社のキャッシュフロー、今後の事業計画、役員の年齢と退職時期——これらをトータルで見た上で、オペレーティングリースが本当に有効かどうかを判断することが重要です。

合法的な節税の世界は奥が深く、一つのスキームがすべての会社に当てはまるわけではありません。でも、知っているかどうかで、手元に残るキャッシュが数千万円変わることも珍しくない。

「今期の利益、どうしようか」と少しでも頭をよぎった社長は、ぜひ一度、この選択肢を検討してみてください。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。