先日、資産10億円規模の不動産を複数持つ社長から、こんな相談を受けました。
「毎年、税金がえげつないんですよ。売るのも嫌だし、かといって持ち続けるだけじゃもったいない気がして……」
この悩み、不動産オーナーの社長なら一度は感じたことがあるんじゃないでしょうか。実はこの社長、ある手法を導入してから、手元キャッシュが年単位で大きく変わりました。それが「信託受益権化」です。
不動産は「売るか持つか」だけじゃない
多くの社長が不動産を「売るか、持ち続けるか」の2択で考えています。でも、その発想のままでいると、毎年フルに課税され続けるだけです。
知っている社長は、第3の選択肢を使っています。不動産そのものを動かすのではなく、不動産から生まれる権利を「金融商品」として扱う方法です。それが信託受益権化であり、SPCを活用したスキームの入口になります。
信託受益権化って何をしているのか
少し仕組みを整理しましょう。
信託受益権化とは、不動産を信託銀行などに信託し、そこから生まれる「受益権」という権利を売買・譲渡できる形に変換する手法です。不動産そのものを売買するのではなく、その収益を受け取る権利を分割・流通させるイメージです。
ここで大きく変わるのが、流動性です。通常の不動産は「1棟まるごと」でしか売れません。10億の物件を半分だけ売る、というのは現実的に難しい。でも受益権化すれば、持分の一部だけを第三者に譲渡することが可能になります。キャッシュが必要なタイミングで、物件全体を手放さずに資金を作れる。これだけでも経営の自由度がまったく変わります。
SPCと匿名組合スキームが節税の本丸
そして、より大きなインパクトを持つのが節税面です。
SPC(特別目的会社)を設立し、そこに不動産を移した上で、匿名組合契約を組みます。この匿名組合スキームのポイントは、減価償却費を特定の出資者側に集中させられる点にあります。
減価償却というのは、不動産の建物部分を毎年経費として落とせる仕組みです。通常は物件を持っている法人に均等に計上されますが、スキームの設計次第で、課税所得の高い主体に減価償却を集中させることが可能になります。
10億円規模の物件であれば、初年度だけで数千万円単位の課税所得圧縮が現実的に起こります。冒頭の社長が3億円の節税効果を得たというのも、複数物件にこのスキームを適用した結果です。
やっている社長とやっていない社長の差
このスキームを使っていない社長は、毎年、法人税・所得税をフルで支払い続けます。減価償却をフル活用できているなら問題ないのですが、そうでないなら毎年「払い過ぎ」の状態が続いていることになります。
一方でスキームを組んでいる社長は、課税のタイミングをコントロールしながら手元キャッシュを最大化しています。利益を「消す」のではなく、課税を将来に「繰り延べる」合法的な手法です。この差が、数年積み重なると億単位になるのは、冒頭の話が証明しています。
注意点:スキームの質で効果は全然変わる
ただし、ここで強調しておきたいのは、信託受益権化やSPCスキームは、組み方によって効果がまったく異なるという点です。
設計を誤ると、期待した節税効果が出ないどころか、税務調査で否認されるリスクも出てきます。匿名組合スキームは過去にも当局から目が向けられてきた分野であり、適切な法的根拠と経済合理性の担保が不可欠です。
必ず不動産税務に精通した税理士と、スキーム設計に慣れた弁護士のチームで取り組むこと。これが絶対条件です。コストはかかりますが、それを上回る効果が出るからこそ、大型不動産を持つ社長たちが使い続けているスキームです。
今すぐ確認してほしいこと
保有している不動産が3億円を超えているなら、一度「信託受益権化の余地があるか」を専門家に相談する価値があります。今期の課税所得が見えてきたこのタイミングは、特に動きやすい時期です。
「売るか、持つか」だけで考えていた不動産に、第3の選択肢があることを知っておくだけでも、社長の意思決定の幅はぐっと広がります。まだ専門家に相談したことがないなら、決算前の今が動き出すベストタイミングです。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。