先日、都内で複数の物件を持つ社長からこんな相談を受けました。「土地と建物をいくつか持っているんですが、このまま何もしないと相続税で子どもたちに迷惑をかけそうで……」。

気持ちはよくわかります。現金や株と違い、不動産は売りにくいのに評価額は高い。いざ相続が発生すると、納税資金が足りずに土地を手放すことになる——これは決して珍しい話ではありません。

ただ、不動産は「節税しにくい資産」ではありません。むしろうまく設計すれば、評価額を億単位で圧縮できる可能性があります。相続税を大幅に下げた実例をもとに、効果的な対策を3つ順番にご紹介します。

3位:アパートを建てると、土地と建物がダブルで評価を下げる

更地を持っているだけだと、ほぼ路線価そのままで相続税がかかります。ところが、そこにアパートや賃貸マンションを建てると、評価の計算が大きく変わります。

まず土地について。人に貸している建物が立っている土地(貸家建付地)は、路線価の約82%で評価されます。約18%の自動減額です。さらに建物は固定資産税評価額が基準になるため、時価の約50%程度まで圧縮されます。土地と建物の合算で見ると、何もしていなかった場合と比べて評価額が大幅に下がるわけです。

注意したいのは、節税だけを目的にアパートを建てると本末転倒になりやすい点です。空室が続けば収入は減り、管理コストだけがかかります。節税効果と収益性を両立できる立地と物件規模で検討することが前提です。

2位:小規模宅地等の特例――5億円の土地が1億円になるケース

不動産節税の中でもとくにインパクトが大きいのが「小規模宅地等の特例」です。事業用や居住用として使っている土地について、一定の面積まで最大80%の評価減が認められます。

数字で見てみましょう。路線価で5億円の土地でも、この特例が適用されれば評価額は1億円になります。相続税は累進課税ですから、課税対象額が下がるほど税額への効果は増幅されます。基礎控除との組み合わせ次第では、相続税がゼロになるケースもあります。

ただし、要件は相当厳しく設計されています。誰が相続するか、その後その土地をどう使うか、申告期限までの居住継続や事業継続が条件になるケースも多いです。「相続が発生してから確認した」では、適用できなくなっていることもある。事前設計が前提になる手法です。

1位:不動産を法人化して株式評価に変える

3つの中でもっとも根本的な節税効果が期待できるのが、資産管理会社を設立して不動産を法人に移す手法です。

個人が直接不動産を持っている場合、相続税の評価は土地なら路線価、建物なら固定資産税評価額が基本です。ところが法人に移すと、相続税の対象は「会社の株式」に変わります。株式の評価(純資産価額方式等)では、法人税相当額として約37%を控除できるため、その分だけ評価が下がります。

実際に、この手法を活用して相続税が1億円以上削減された事例も出てきています。資産規模が大きくなるほど効果は高まります。

ただし、法人化にはコストと手間が伴います。設立費用に加え、不動産の移転時には不動産取得税・登記費用が発生します。また、設立タイミングや移転方法を誤ると、かえって税負担が増えるリスクもあります。必ず税理士と入念にシミュレーションを行った上で実行することが大前提です。


3つの手法に共通しているのは、「早く動くほど選択肢が広い」という点です。相続が発生してから使える手法はほとんどなく、どれも数年単位の準備が前提になっています。

不動産をそのまま持っているだけという状態なら、今期の決算が終わったタイミングで税理士に一度シミュレーションを依頼してみてください。対策を始められるタイミングは、思っているよりずっと限られています。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。