先日、年商8億の建設会社を経営する社長から、こんな言葉をもらいました。「税制改正のニュースって毎年出るけど、結局うちには関係ないんでしょ?」

その気持ち、わかります。でも2026年4月に施行されたこの改正は、少し話が違います。やり方次第で、中小企業でも数百万から数千万円単位で税負担が変わる内容が含まれているからです。

「得する社長」と「損する社長」の差は何か。今日はそのポイントを3つに絞って整理してみます。

第3位:今期すでに賃上げを実施している社長

従業員の給与を前年比1.5%以上引き上げた社長は、今改正の恩恵を受けやすい立場にあります。

賃上げ促進税制は以前からありましたが、今回の改正で控除率の上限が拡充されました。給与増加額の最大45%を、法人税額から直接差し引けるのです。たとえば年商10億クラスの会社が給与総額を500万円引き上げると、最大225万円が法人税から控除されます。これは「税額控除」なので、所得控除とはインパクトが桁違いです。

注意点は、控除率が会社の規模や追加要件によって変わることです。「教育訓練費の増加」など上乗せ要件を満たすと控除率がさらに上がる仕組みになっています。どこまで積み上げられるかは、決算前に顧問税理士と一緒に試算しておくのが賢明です。

第2位:事業承継を「いつか考えよう」と先送りしている社長

自社株の問題を後回しにしている社長は、今年こそ動きどきです。

法人オーナーが後継者に自社株を渡す際、本来であれば多額の贈与税・相続税がかかります。ところが「特例事業承継税制」を使うと、この税負担が猶予される仕組みがあります。株価が数億円規模になっている会社では、活用できるかどうかで承継の難易度がまったく変わります。

問題は申請期限です。この特例を使うには、まず「特例承継計画」を都道府県に提出する必要があります。この計画の申請期限が2027年12月末に設定されています。

「まだ1年以上ある」と思いがちですが、計画策定→専門家との調整→申請→贈与実行というプロセスには、最低でも半年から1年かかります。2026年中に着手しないと、実質的に間に合わなくなるケースが出てきます。後継者が決まっていなくても、「自社株が今いくらになっているか」を把握するだけでも大きな一歩になります。

第1位:持株会社で所得を分散できている社長

法人税率の構造を正しく理解しているかどうか。これが、今改正で最も大きな差になるポイントです。

法人の実効税率は、所得800万円以下の部分が約22%、800万円を超えた部分が約34%になります。この差は約12ポイント。利益が大きくなるほど、この差が積み上がっていきます。

たとえば年間利益が5,000万円ある会社と、持株会社を活用して2社に2,500万円ずつ分散できている会社では、適用される税率の構造がまったく異なります。単純計算でも年間で数百万円の差が出ることがあり、今回の改正で中小企業優遇措置の適用条件が一部見直されたことで、この構造の恩恵はさらに大きくなっています。

ただし「形だけの分社」と税務上で判断されると、否認リスクが生じます。持株会社の設計には実態要件が厳しく問われるため、専門家と連携した上で進めるのが大前提です。


今回挙げた3つの条件——賃上げ、事業承継、持株会社——に共通しているのは、「今年中に動けるかどうか」が分岐点になっているという点です。決算が近づいてから慌てて動いても、選択肢は狭まるばかりです。まずは顧問の税理士に現状を整理してもらうところから始めてみてください。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。