先日、ある製造業のオーナー社長からこんな相談を受けました。「顧問税理士からは特に何も言われないし、税金が多いのは業績がいい証拠だと思っていた」と。ただ、その会社には持株会社がありませんでした。一緒に試算してみると、年間で2億円以上の節税余地があることがわかり、社長は絶句していました。
「知らなかった」では済まない話です。払いすぎた税金は返ってきません。
二重課税という、静かに積み上がる損失
年商10億を超えると、複数の子会社や関連会社を持つ経営者も増えてきます。このとき、子会社で生まれた利益を社長個人や別の会社に移そうとすると、必ず「課税の壁」にぶつかります。
問題は、その課税が二段階で発生することです。子会社が利益を出せば法人税が引かれ、残った利益を配当として個人で受け取れば、今度は所得税や住民税がかかります。この二重課税の結果、実効税率が50%を超えるケースは決して珍しくありません。
年間で5億円の利益があれば、2.5億円が税として消えていく。そういう計算になります。
持株会社を挟むだけで、何が変わるのか
持株会社(ホールディングス)を設立すると、この構造が根本から変わります。
法人税法に「受取配当金の益金不算入」という制度があります。平たく言うと、100%子会社から持株会社への配当は、持株会社の課税所得に含めなくていいというルールです。子会社→持株会社の資金移動に対して、追加の法人税がかからない。これが最大のポイントです。
グループ全体を持株会社が束ねる形にすると、各事業会社で生まれた利益を持株会社に集約し、そこから次の投資や経費の支払いに回せます。この一連の流れを作るだけで、実効税率は大幅に圧縮されます。年商10億規模なら、年間2〜3億円の節税余地が生まれることも珍しくありません。
「複雑そう」で先送りするコストを考えてみてください
持株会社の話をすると、「設立コストがかかりそう」「管理が複雑になる」と二の足を踏む社長が多いのも事実です。確かに、設立時の費用や登記手続き、グループ会計の整備は必要になります。
ただ、一度構造を整えてしまえば、その後は継続的に節税効果が続きます。設立コストは、初年度の節税額で十分に回収できるケースがほとんどです。
むしろ考えてほしいのは、先送りした1年分の機会損失です。毎年2〜3億円の節税余地を活かせないまま5年過ごせば、10〜15億円の差が生まれます。「なんとなく後回し」が、最も高い判断ミスになることがあります。
こんな会社は、特に持株会社の恩恵が大きい
持株会社設立の効果が出やすい会社には、いくつか共通点があります。
複数の事業を展開していて今後もM&Aや新会社設立を考えている、子会社から毎年まとまった配当を受け取っている、事業承継を10年以内に視野に入れている、そういった会社です。
特に事業承継と組み合わせると、株式評価の引き下げ効果も加わり、相続税対策にもなります。節税と承継対策を同時に整えられるのが、持株会社活用の大きな魅力です。
まず「試算」から始めてみてください
大きな決断をする前に、まず現状の税の流れを数字で把握することが先です。顧問税理士に「グループ全体の実効税率はどれくらいか」「持株会社を設立した場合と比較してほしい」と依頼してみてください。
試算にコストはかかりません。でも、試算をしないまま過ごす1年は、取り返しのつかない損失として積み上がっていきます。まだ持株会社を持っていないなら、今期中に一度だけでも数字を確認してみることをおすすめします。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。