先日、年商12億円の製造業を経営する社長から連絡が入りました。「そろそろ持株会社を作ろうと思っているんですが、どうでしょう」という内容でした。
正直に言います。もう5年早ければ、2億円以上の税負担が変わっていた可能性があります。
「いつ作るか」が全てを決める
持株会社(ホールディングス)の設立は、やるかやらないかよりいつ作るかが最大の論点です。これを知らずに「うちもそろそろ大きくなってきたから」と後回しにしていると、気づいたときには取り返しのつかない税負担が生まれていることがあります。
結論から先に言うと、持株会社は株価が低いうちに作るほど有利です。この一文を今日覚えて帰るだけで、何千万円という差が生まれるかもしれません。
株価が上がると、なぜ損をするのか
鍵は株式の評価額にあります。
会社の株式は、利益が積み上がり会社が成長するほど評価額が上がります。問題は、持株会社を設立して既存会社の株式を移転する際、その評価額に応じた税負担が発生するという点です。
株価が低い段階で移転すれば、税は小さくて済む。でも株価が上がってから移転すれば、みなし譲渡課税や贈与税が一気に膨らみます。このシンプルな構造が、2億円という差を生み出すのです。
年商2〜3億と年商10億では何が違うのか
具体的なイメージで考えてみましょう。
年商2〜3億円の段階では、会社の株式評価額はまだ比較的低い水準にあります。この時期に持株会社を設立して株式を移しておけば、移転にかかる税負担は最小限に抑えられます。
一方、年商が10億円を超えてくると、株価もそれに連動して大きく跳ね上がることが多い。ここで初めて「さあ持株会社を作ろう」となると、株式移転の際に発生する税コストは桁違いになります。同じ手続きをやっているのに、タイミングだけで2億円以上の差が出るケースは珍しくありません。
なぜ後回しにしてしまうのか
多くの社長が持株会社の設立を先延ばしにしてしまう理由には、共通したパターンがあります。
一つ目は「まだ自分には早い」という感覚です。持株会社といえば上場企業や大企業のイメージがあり、中小企業には縁がないと思っている方が多い。でも実際には、年商2〜3億円の段階から検討を始めるのが理想的なのです。
二つ目は「面倒そう」という印象です。設立手続き、株価評価、移転スキームの設計——たしかに複雑には見えます。でも専門家と組めば、動き出しのハードルはそれほど高くありません。
三つ目が、実は最も厄介な「知らなかった」というケースです。顧問税理士から提案を受けたことがなければ、そもそも検討する機会もないわけです。
持株会社を作ると何が変わるか
節税の観点だけで言っても、メリットはいくつかあります。
- オーナー個人への配当課税を抑えられる
- グループ内での資金移動が柔軟になる
- 事業承継・株式の分散対策がしやすくなる
- M&A時の出口戦略が描きやすくなる
ただし、これらの効果は「最初から設計して作った」場合の話です。後から慌てて作っても、こうした恩恵を十分に享受できないことも多い。
今の年商で、あなたはどの段階にいるか
年商が2〜5億円の段階にあるなら、今が持株会社の設計を考える最もいいタイミングかもしれません。
反対に、すでに年商が8億・10億を超えているなら、「損してしまった」と嘆くより今できる最善の手を考えるほうが建設的です。株価を引き下げる手法や段階的な移転スキームなど、まだ打てる手が残っているケースも実際にはあります。
いずれにしても、動き出しが早いほど選択肢は広い。「そのうち」と思っているなら、ぜひ今期中に一度、専門家に相談してみてください。2億円という数字は、ちっとも大げさではありません。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。