先日、資産数十億円を持つある経営者から、こんな連絡が来ました。「税務署から調査が入るらしい。不動産で節税していたんだけど、大丈夫かな?」
調べてみると、そのスキームは5年前に設計されたもので、当時は合法・有効な手法でした。ところが2024年から相続税の評価ルールが変わり、状況が一変していたのです。
2024年に何が変わったのか
2024年1月、国税庁は不動産の相続税評価に関する通達を改正しました。これまで路線価や固定資産税評価額で評価されていたタワーマンションが、より時価に近い形で評価されるようになったのです。
簡単に言えば、「市場価格より大幅に低く評価して相続税を減らす」という手法が、正面から規制対象になりました。特にタワーマンションは、高層階になるほど市場価格が高くなるのに、従来の評価では低く出やすいという特性がありました。この「乖離」を利用した節税が、2024年を境に一気に目をつけられるようになっています。
なぜ「5億円追徴」が現実になるのか
追徴課税で怖いのは、元の税額だけではありません。
税務署が「仮装・隠蔽があった」と判断した場合、重加算税35%が上乗せされます。申告漏れの税額が1億円なら、そこに35%の重加算税、さらに延滞税も加算されます。スキームが数年前に設計されたものであれば、それだけ延滞税の計算期間も長くなります。
こうした積み重ねで、元々の節税効果が1〜2億円規模のスキームでも、最終的に5億円近い追徴になった事例が実際に出ています。節税効果が大きいほど、発覚時のダメージも比例して大きくなる——これが不動産節税の本質的なリスクです。
特に危険な「実態のないSPC」
不動産SPCとは、不動産を保有・運用するために設立された特別目的会社のことです。法人格を使って相続税評価を下げたり、所得を分散したりする手法として使われてきました。
問題は、「事業実態がないSPC」です。名義上は会社として不動産を所有しているものの、実際の運営実態がない、役員報酬の根拠が薄い、従業員がいない——そういった法人は、今や国税の重点調査対象になっています。
形式を整えるだけでは不十分で、実際の事業活動・意思決定の記録・契約書類など、「実態」を証明できる証拠が必要なのです。2024年以降、不動産SPCへの調査件数は増加しており、かつてはグレーゾーンとされていた手法も、今は明確にアウトとされるものが出てきています。
合法スキームでも「設計後の維持」が命
「ちゃんと税理士に頼んだ」「当時は合法だった」という言い訳は、残念ながら通りません。
税法は毎年変わります。設計時点では問題なかったスキームが、数年後には通達改正や判例の蓄積によって否認される——これは不動産節税では珍しくないことです。特に相続税は、相続が発生して初めて税務署が評価に入るため、設計から5〜10年後に問題が表面化するケースがあります。
だからこそ重要なのが定期的な見直しです。不動産スキームは設計して終わりではなく、毎年の税制改正に合わせてメンテナンスが必要なのです。
今すぐ確認しておきたいこと
不動産で節税している方に、確認してほしい点があります。
まず、タワーマンションを相続税対策で購入したのが2023年以前であれば、現在の評価額を再計算してもらっているかどうか。次に、不動産SPCがある場合、事業実態を示す書類(議事録、契約書、金融機関との取引記録)が整っているかどうか。そして、スキームの設計者に最近連絡を取り、現状のリスクを確認しているかどうか。
この3点を担当税理士と確認するだけで、リスクの有無をかなり把握できます。
節税効果が高いスキームほど、維持するためのコストと注意が必要です。不動産で節税している心当たりがある方は、この機会にぜひ担当の税理士へ連絡してみてください。「やっておけばよかった」ではなく、「今確認してよかった」で終わらせてほしいのです。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。