先日、ある製造業の社長からこんな相談がありました。「今期は予想以上に利益が出てしまって、このままだと税金がかなり高くなりそうで…」。3月末の決算まであと数ヶ月というタイミングでした。

年商10億を超えた法人の決算は、1億や2億単位の話が普通に動きます。だからこそ、「知っているか知らないか」の差が、そのまま億単位の税負担の差につながってしまうんです。今回は、3月決算の法人が決算前に必ず確認しておきたい節税の話をしたいと思います。

賃上げ促進税制、使えていますか?

節税の話をすると、多くの社長は「設備投資」や「生命保険」を思い浮かべます。でも今、もっとも使い勝手がいいのは「賃上げ促進税制」かもしれません。

これは、前年比で給与総額を一定以上引き上げた法人に対して、法人税額から直接控除できる制度です。「税額控除」なので、所得から引く控除とは違い、計算した法人税の金額そのものを減らせる点が強力です。

具体的には、前年比2.5%以上の賃上げを達成していれば、給与増加額の30%を税額からそのまま引けます。さらに、社員に対する教育訓練費の要件を満たすと、控除率は最大45%まで上がります。

たとえば、給与総額が年間3億円の会社で2.5%の賃上げをしたとします。増加額は750万円。その30%、つまり225万円が法人税額から直接引かれます。45%の要件まで満たせば337万円以上の控除です。給与規模が大きい会社ほど、控除額も文字通りケタ違いになります。年商10億超で従業員が多い製造業・サービス業なら、控除額が数千万円規模になることも珍しくありません。

「うちはちゃんと賃上げしているよ」という社長でも、要件を正確に確認せずに控除を使い損ねているケースは意外と多いです。まず顧問税理士に「今期の賃上げ控除、最大限使えていますか?」と確認してみてください。

課税を「先送り」する手法も組み合わせる

賃上げ税制のような恒久的な節税とは別に、課税を翌期以降に繰り延べる手法も3月決算の法人にとっては重要です。

代表的なのが「オペレーティングリース」と「設備の即時償却」の組み合わせです。

オペレーティングリースは、航空機や船舶などの大型資産をリースする仕組みで、期中にリース料を一括で損金算入できます。一定規模の投資が必要ですが、今期の利益を大きく圧縮できる効果があります。設備の即時償却も同様で、特定の要件を満たす設備投資を行えば、取得価格の全額をその期の損金にできます。

ただし、ここで強調したいことがあります。これらはあくまで「課税の繰り延べ」です。今期の税金を減らせても、翌期以降に課税が移るだけで、トータルの税負担がゼロになるわけではありません。

それでも、「今期は利益が大きすぎる」「来期は投資計画があって利益が出にくい予定」という状況なら、繰り延べには十分な意味があります。税金の支払いタイミングをコントロールすることで、手元のキャッシュを守る効果があるからです。

3月末という締め切りを軽く見ない

決算月が3月の法人にとって、2月・3月は本当にタイムリミットです。賃上げの実績は3月末時点で確定しますし、オペレーティングリースや設備投資は申込・契約のタイミングが決算期中でなければなりません。

「もう少し利益が固まってから考えよう」と先送りしているうちに決算を迎えてしまった社長を、私はこれまで何人も見てきました。決算直前に「やっぱり動きたい」となっても、手を打てる選択肢はどんどん狭まっていきます。

年商10億を超えているなら、決算の2〜3ヶ月前には税理士と密に話し合うことが、億単位の節税の前提条件になります。

動けるうちに、税理士に連絡を

節税の話は、「こういう制度がある」と一般論としてお伝えすることはできます。でも、実際に使えるかどうか、どの手法が自社に合うかは、個別の決算数字を見ないと判断できません。

賃上げ促進税制の要件を正確に満たしているか、オペレーティングリースの投資規模として今期の利益に対して適切かどうか、こうした判断は顧問税理士とリアルタイムで確認しながら進めるべきものです。

3月決算でまだ今期の節税対策を顧問税理士と詰めていないなら、今すぐ連絡することをおすすめします。決算2ヶ月前の今が、動ける最後のタイミングかもしれません。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。