先日、年商3億円ほどの建設会社を経営する社長から、こんな連絡が届きました。「毎年1,000万円の保険料を払い続けているのに、顧問税理士から『もう節税にならない』と言われた。どういうことですか?」
その方は数年前、「節税しながら積立もできる」という触れ込みで法人定期保険に加入していました。保険料が全額損金に算入でき、しかも解約時には支払った保険料の大半が返ってくる。かつてはそういう商品が堂々と販売されていたのです。
ところが2025年の税制改正を境に、その旨みはほぼ消えています。知らないまま払い続けていると、毎年数百万円単位で損をしている可能性があります。
損金算入できる割合が激変した
今回の改正のポイントは「解約返戻率」です。
解約返戻率とは、払い込んだ保険料に対して、解約時に戻ってくるお金の割合のこと。この返戻率が85%を超える商品は、損金に算入できる割合がわずか10%に制限されました。
具体的に計算してみましょう。年1,000万円の保険料を払った場合、損金に算入できるのは100万円。法人税率を約30%とすると、節税効果は30万円ほどです。
改正前は全額損金算入だったので、同じ1,000万円でも節税額は300万円。節税効果が文字どおり「10分の1」になる、というのはこういう意味です。
保険会社も商品そのものを変えてきた
さらに厄介なのが、保険各社の動きです。
各社は規制の抜け穴をふさぐように、解約返戻率そのものを引き下げた商品へのシフトを進めています。かつて95%を超えていた返戻率が、今では70%台の商品も珍しくありません。
つまり、節税効果が薄れただけでなく、「解約しても保険料があまり戻ってこない」という事態が同時に起きているのです。節税と積立、両方の旨みが一度に消えた格好です。
旧商品を持ち続けるか、解約するか
すでに加入している方にとって、最大の悩みはここです。
旧商品を持ち続けても、損金算入の効果は限定的。一方で、今すぐ解約すると、返戻金が一時的に益金として計上され、逆に税負担が増えるケースもあります。解約のタイミングと金額次第では、数百万円単位でキャッシュフローに差が出ることもあります。
「解約が正解」とも「持ち続けるべき」とも、一概には言えません。現在の解約返戻率がいくらか、返戻率のピークはいつか、今期の利益状況はどうか——複数の条件を重ね合わせて、個別に判断する必要があります。
見直しの第一歩として確認してほしいこと
まず手元の保険証書を引っ張り出して、加入時期と解約返戻率の推移を確認してください。2019年の改正以前に加入した旧商品か、それ以後の商品かで、税務上の扱いが大きく変わります。
次に確認するのは、現在どの「ゾーン」で損金算入されているか。返戻率によって損金算入割合が異なる仕組みになっており、40%以下・40〜85%・85%超の3段階で扱いが変わります。自分の商品がどこに該当するか、設計書や保険会社への確認で把握できます。
その上で、今後5年の事業計画や資金繰りと照らし合わせ、「出口を作るなら何年後が適切か」という視点で担当税理士と相談するのが理想的な流れです。
法人保険に代わる節税策も検討を
保険の節税メリットが薄れた分、別の手法への注目が高まっています。
経営セーフティ共済(倒産防止共済)は、掛金が全額損金になる制度として改めて見直されています。また、役員退職金の計画的な積み立てや、小規模企業共済の活用も、透明性が高く使いやすい手法として定評があります。
ただし、どの手法にも適した会社規模や利益水準があります。「他の社長が使っているから」という理由だけで飛びつくのは危険です。自社の状況に合った手法を選ぶために、まず現状の棚卸しが先決です。
法人保険は「入ったら終わり」ではありません。税制は毎年のように動いており、数年前に最適だった選択が今では足かせになっているケースが増えています。ここ2〜3年で一度も見直していないなら、今期中に顧問税理士と時間を取って、じっくり話し合うことをおすすめします。払い続けている保険料が、本当に今の自社に合っているか——一度立ち止まって確認する価値は十分あります。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。