先日、年商10億円規模の製造業の社長からこんな相談を受けました。「今期は利益が想定を大幅に超えてしまって、法人税が億単位になりそうです。なにかいい方法はないですか」というものです。
このパターン、決算前によくある話です。そして多くの場合、「生命保険ですかね」「設備投資ですかね」という話になって終わります。でも今日は、あまり語られない選択肢を紹介したいと思います。それがオペレーティングリースです。
5億を出資したら、初年度に4億が損金になる
少し乱暴な言い方をします。5億円を出資すると、その年に約80%——つまり4億円が損金として計上できる。これがオペレーティングリースの最大の特徴です。
通常の設備投資は、減価償却で少しずつしか損金にできません。しかしオペレーティングリースは、投資初年度に一気に大きな損金を作れます。法人税率を30%と仮定すれば、4億円の損金は1.2億円の税負担軽減になります。規模感でいえば、保険や倒産防止共済とは桁が違います。
仕組みを理解する——航空機はどこへ?
「5億で何を買うんですか?」と思いますよね。答えは、航空機や船舶です。
まず海外に特別目的会社(SPC)を設立し、そのSPCが航空機を購入してエアラインに貸し出します。このSPCに対して、日本の投資家が匿名組合という形で出資するのです。
匿名組合とは、簡単に言えば「事業の利益と損失を出資比率に応じて按分する契約」です。SPCが抱える航空機の減価償却費——これが相当な金額になるのですが——が、出資比率に応じて各投資家に配分されます。5億円を出資した社長には、初年度に約4億円の減価償却費が割り当てられ、それが損金として計上できるという仕組みです。
出口を設計しないと「先送り」で終わる
ここからが重要です。オペレーティングリースは5〜8年間の長期投資で、期間終了時に航空機が売却されて出資金が戻ってきます。このとき、益金が発生します。
「損金で税金を減らしたのに、後で益金が出るならプラスマイナスゼロでは?」と思われるかもしれません。半分正解で、半分違います。
重要なのはタイミングです。税金は「今払う」より「後で払う」ほうが、手元資金を運用できる分だけ有利です。そして出口のタイミングを役員退職金の支給やM&Aによる株式売却と重ねることで、その益金を相殺できます。
退職金は損金として計上でき、受け取る側にも税制優遇があります。M&Aのタイミングと合わせれば、トータルの税負担を大幅に抑えることができます。つまりオペレーティングリースは「今の税金から逃げる装置」ではなく、「課税のタイミングと金額を自分でコントロールするための設計図」だと考えると理解しやすいです。
こんな社長に向いている
向いているのは、次のような状況にある法人です。
- 今期の利益が大きく、法人税が数千万〜数億円になる見込み
- 数年後に事業承継やM&Aを検討している
- 役員退職金の支給を計画している
- 出資できる余剰資金(最低でも1〜2億程度)がある
逆に、資金繰りが厳しい時期や、出口の設計が全く見えていない状態での参加は避けるべきです。長期契約なので途中解約は基本的にできません。また、航空会社の経営リスクなど、スキーム自体のリスクもゼロではないことは頭に入れておいてください。
「決算前に聞いた」では遅い
最後に一つ、現実的な話をします。
このスキームは、通常の税務相談の延長線上にはなかなかありません。組成に時間がかかるため、決算の3ヶ月前に「何か節税ないですか」と聞いても間に合わないケースが多いです。
利益が見えてきたら、できれば半年前——3月決算であれば遅くとも1月には動き出すことをおすすめします。タイミングを逃すと、次の期まで待つことになります。
今期の利益が大きいと感じているなら、「航空機リース・退職金・M&A」この3つのキーワードを頭に入れた上で、専門家に相談してみてください。知っているのと知らないのでは、億単位で結果が変わることがあります。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。