「息子に会社を継がせようと自社株の評価を計算したら、相続税が5億を超えてしまって……」

先日、年商7億円の建設資材会社を経営する60代の社長から、こんな相談を受けました。事業は順調で、後継者も決まっている。それなのに、株価が高すぎて承継できない。こういう状況に陥っている経営者が、実はたくさんいます。

ただ、手が打てないかといえば、そんなことはありません。正しい手法を組み合わせれば、相続税を9割近く圧縮できるケースが現実に存在します。今日はその3つの手法を順番に見ていきましょう。

締め切りまで1年半を切った「特例措置」を使っているか

まず知っておきたいのが、事業承継税制の特例措置です。後継者が自社株を相続・贈与で受け取る際の税負担を、最大100%猶予してもらえる制度で、要件を満たし続ければ事実上の免除になります。

問題は期限です。この特例を使うには、2027年12月31日までに計画書を都道府県知事に提出する必要があります。あと1年半ほどしかありません。

計画書の作成から提出、実際の株式移転まで最低でも半年から1年はかかります。「まだ早い」と思っている社長ほど、気づいたら間に合わなかった——というケースが本当に多いのです。

持株会社を使えば株価の評価額そのものを下げられる

2つ目が持株会社スキームです。事業会社の上に新たな持株会社を設立し、株式をそこに移す形をとります。

持株会社の株価は、保有する事業会社の純資産や配当実績などをもとに算定されます。この過程で評価のディスカウントが生まれ、直接保有していた場合と比べて50〜70%程度に圧縮されるケースがあります。5億円の株が2〜2.5億円に評価し直されるイメージです。

ただし、この効果は業種・規模・資産構成によって変わります。設計を誤ると効果が薄くなるどころか逆効果になることもあるため、専門家との緻密な設計が前提になります。

M&Aを組み合わせると、なぜ9割圧縮が見えてくるのか

最も効果が大きいのが、M&Aと組織再編を組み合わせる手法です。

流れはこうです。まず持株会社スキームで株価を圧縮した状態の事業会社を、第三者にM&Aで売却します。これで自社株が現金に変わります。一方、持株会社に残った資産については、事業承継税制の特例措置を活用して後継者に承継します。

3つの手法がかみ合うことで、相続財産の評価額と税額が多段階で圧縮され、実質9割近くになるケースも出てきます。

整理するとこうなります。

  • 持株会社スキーム → 株価評価を50〜70%圧縮
  • M&Aによる第三者売却 → 自社株を現金化し、承継財産を整理
  • 事業承継税制の特例措置 → 残る税負担を最大100%猶予

もちろん、どんな会社にも同じ効果が出るわけではありません。業種、保有資産の性質、後継者の状況、そして何より実施のタイミングが結果を大きく左右します。

「まだ先でいい」と思っているうちに期限が来る

特例措置の2027年末という締め切りは、思っている以上に近いです。今から動いても、準備に使える時間はそれほど多くありません。

まず手をつけるべきは、現状の自社株評価額の試算です。数字を見るだけで、選べる手が具体的になります。「高すぎて手が出ない」と諦めていた社長が、設計次第で全く違う選択肢を持てるようになることも珍しくありません。

まだ税理士と事業承継について話し合っていないなら、今期中に一度相談の場を設けておくことをおすすめします。スキームの設計は時間が命です。動き出すのが早いほど、使える手が増えます。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。