先日、資産10億円超を持つ製造業の社長から、こんな相談を受けました。

「相続税の試算をしたら5億円超えていて、正直どうすればいいか分からない。子どもに会社を引き継ぎたいのに、税金を払うだけで精一杯になりそうで……」

気持ちはよく分かります。でも、正直に言います。適切な手を打てば、その5億円は半分以下になる可能性があります。今回は、多くの社長がまだ活用しきれていない、3つの節税の柱をご紹介します。

不動産の「持ち方」で評価額が劇的に変わる

相続税の世界では、同じ価値の資産でも「何で持つか」によって評価額が大きく変わります。その代表格が賃貸不動産です。

更地や自宅用地をそのまま持っていると、時価に近い評価になります。一方、賃貸物件として人に貸し出している土地や建物は、借家権・借地権の控除が入るため、評価額が時価の40〜50%程度まで下がるのが一般的です。

さらに「小規模宅地等の特例」を組み合わせると効果は絶大です。事業用や賃貸用の宅地は、一定の要件を満たせば最大80%の評価減が受けられます。1億円の土地が2,000万円として評価される計算です。

ただし、特例には面積の上限や継続要件があります。「とにかく不動産を買えばいい」という単純な話ではないので、購入前に必ず全体設計を確認してください。

役員退職金は「一石二鳥」の節税ツール

自社株の評価が高い社長ほど活用してほしいのが、役員退職金です。

非上場株式の相続税評価額は、会社の純資産や利益をベースに計算されます。つまり、退職金を支払って会社の純資産を減らせば、それに連動して株の評価額も下がる仕組みです。例えば退職金1億円を支払えば、株の評価額が1億円以上圧縮されるケースもあります。

退職金は役員個人への支払いなので、受け取った側も退職所得控除が使えます。普通の給与と比べて税負担が格段に軽い。会社側は損金計上でき、受け取る側も税負担が小さい。まさに二重の節税効果です。

金額と支払うタイミングの設計が肝心です。役員在任年数や功績倍率に照らして適正範囲内に収めないと、税務署に否認される可能性があります。ここは税理士と一緒に設計するのが鉄則です。

2027年末までの「特例措置」を絶対に見逃すな

今回の3手の中で、最も影響が大きいのがこれです。事業承継税制の「特例措置」。知っている社長と知らない社長で、数億円の差が生まれています。

非上場株式を後継者に渡す際、通常であれば相続税・贈与税がかかります。ところがこの特例措置を使うと、株式の相続税・贈与税が最大100%猶予されます。さらに、一定の要件を満たし続ければ最終的に免除になります。

5億円の自社株であっても、承継時の税負担をゼロにできるケースが実際にあります。

ただし、この特例には期限があります。2027年12月31日までに相続・贈与が発生した分が対象です。そして肝心なのが「特例承継計画」の提出です。計画書自体の提出期限(2024年3月末)はすでに過ぎていますが、計画を出していた法人はまだ適用を受けられる状態にあります。

「うちはまだ間に合う?」という方は、早急に税理士に現状確認をしてください。

3手を組み合わせると効果が倍増する

重要なのは、これら3つの手を「単独で使う」ではなく「組み合わせて設計する」ことです。

不動産で評価を下げ、退職金で株の評価を圧縮し、事業承継税制で株式の移転コストをゼロに近づける。この3手を連動させると、相続税の試算が5億から1〜2億台に下がったケースも珍しくありません。

ただし、順番を間違えると効果が薄れたり、逆に課税リスクが生じたりします。「今期何をするか」だけでなく、「向こう3〜5年でどう動くか」という時間軸で計画を立てることが大切です。

相続税の対策は、早く始めるほど選択肢が広がります。「まだ自分には関係ない」と思っている間に選択肢が減っていくのが怖いところです。特に事業承継税制は2027年末という期限が迫っています。今の段階で一度、顧問税理士に「うちはどこまで使える?」と聞いてみることをおすすめします。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。