先日、地方で工場と倉庫を数棟持つ建設業の社長から、こんな相談を受けました。「税理士に相続税の試算をしてもらったら、3億円超の納税額が出た。このままでは会社も土地も手放すことになる」と、青ざめた表情で話していました。

相続税の怖さは、不動産を持っていても現金で払わなければならない点にあります。土地や建物はすぐに売れないのに、税務署への支払い期限は相続開始から10ヶ月以内。そのプレッシャーは相当なものです。

ただ、うまく設計すれば、不動産そのものが最強の相続税対策になります。実際に1億円超の評価圧縮に使われた3つの手法を、今回は紹介します。

第3位:賃貸アパートを建てると評価がガラッと変わる

土地を「ただ所有しているだけ」にしておくのは、相続対策として最ももったいない状態です。更地のままだと路線価がそのまま評価額になりますが、アパートを建てた瞬間に計算の仕組みが変わります。

土地は「貸家建付地」として評価され、路線価の約82%に圧縮されます。さらに建物本体は固定資産税評価額での評価となり、これが時価の約50〜60%水準です。たとえば時価1億円の土地に6,000万円をかけてアパートを建てると、相続税評価の合計は更地のときと比べて3,000万円以上下がることもあります。

ただし、節税効果を優先して「需要のない土地にアパートを建てる」のは危険です。空室が続けば収益が出ないどころか、維持費と相続税の両方が重くのしかかってきます。立地・需要・収益性を先に確認することが大前提です。

第2位:小規模宅地の特例は「事前の設計」がすべて

これは要件さえ満たせば、最大80%の評価減が受けられる強力な制度です。5億円の土地が相続税評価上1億円になるケースもあり、使い方次第では相続税の負担を劇的に変えます。

対象は事業用地や居住用地など。330〜400㎡の範囲が対象で、要件を満たした土地に適用されます。制度自体は有名ですが、「知っていても使えなかった」という失敗が非常に多い。

理由は、要件が細かく重なり合っているからです。相続前から継続して事業をしていること、土地を引き継ぐ人の属性(同居していたか、別の住まいを持っていないかなど)、申告期限まで保有・事業継続していること……。相続が起きてから「あの土地に使えると思ったのに、要件を満たしていなかった」という話は珍しくありません。

特例をフル活用したいなら、生前のうちに要件を満たす状態を作っておくことが絶対条件です。

第1位:不動産を法人に移すと評価が37%圧縮される

3つの中でもっとも効果が大きいのが、資産管理会社(法人)への不動産移転です。相続税を1億円超削減した事例が最も多いのも、この手法です。

仕組みはシンプルです。個人が持つ不動産を法人に移すと、相続税の課税対象が「不動産そのもの」から「その法人の株式」に変わります。法人の株式評価には「純資産価額方式」が使われますが、このとき純資産から法人税相当額(約37%)を控除する計算が入ります。

評価額2億円の不動産を法人に移すと、株式の評価は単純計算で約1.26億円程度になる可能性があります。差額の7,400万円以上が丸ごと圧縮されるイメージです。さらに法人内で役員報酬や生命保険の設計ができるため、節税の余地はさらに広がります。

ただし、移転のタイミング・方法(売買か現物出資か)・その後の法人運営コストなど、考慮すべき変数が多い手法でもあります。設計を誤ると、かえってコストが増えることもあるため、単独での判断は禁物です。

共通して言えること:「相続は突然来る」

この3つの手法に共通しているのは、どれも「時間がかかる」という点です。アパートを建てるにも、特例の要件を整えるにも、法人化を有効に機能させるにも、事前の設計期間が必要です。

相続が起きてから考えていては、使える手法の9割が間に合いません。親御さんが元気なうちに資産の棚卸しをして、どの手法が自分の状況に合うかを専門家と一緒に検討しておく。それが相続税対策の本質です。

まだ相続税の試算すら行っていないなら、まずそこから始めてみてください。数字が出るだけで、打つべき手が見えてきます。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。