先日、関西で製造業を営む社長からこんな電話がかかってきました。「息子に会社を継がせようと思っているんですが、税金はどのくらいかかりますか?」と。
その会社、従業員は50人ほど、株式の評価額はざっと10億円。「まあ、ある程度はかかるんでしょうね」と、どこか軽い感じで聞いてきたんです。
正直に伝えました。「何も対策しなければ、最大5億円以上の相続税がかかる可能性があります」と。電話口でしばらく沈黙が続いたのを、今でも覚えています。
2027年12月末という「最後の分水嶺」
中小企業の事業承継において、今まさに意識すべき期限があります。それが2027年12月31日です。
この日までに株式の承継を完了させると、「事業承継税制の特例措置」が使える可能性があります。この制度を簡単に言うと、後継者に承継する株式の全部について、相続税・贈与税が猶予され、最終的に免除されるというもの。つまり、億単位の税負担がゼロになりうる、非常に強力な制度です。
通常、10億円の非上場株式を相続や贈与で承継すると、最大55%の税率が適用されます。単純計算で5億5,000万円。これを一括で準備するのは、どんな優良企業でも簡単ではありません。
すでに終わっている「入口」がある
ただし、ここで多くの社長が見落としていることがあります。
この特例措置を使うには、「特例承継計画」という書類を都道府県に提出しておく必要がありました。そして新規提出の受付は、2024年3月末をもって終了しています。
現時点では、計画書を提出済みの会社だけが特例を使える状態です。「うちは出してあるのかな?」と記憶があやふやな社長も意外と多いのですが、顧問税理士に確認すれば数分でわかります。まだ確認していないなら、今日中に電話してみてください。
確認すべきポイントは、大きく2つです。
- 特例承継計画を提出済みかどうか
- 計画書に記載した後継者・承継方法が今の方針と合致しているかどうか
後継者が変わっていたり、承継の方法を見直していたりする場合、書類の修正が必要なケースもあります。細部まで確認しておくことが大切です。
2026年以降、要件は厳しくなる前に動く
もう一つ知っておいてほしいのが、2026年以降も税制改正の議論は続くということです。
事業承継税制は、制度発足当初から「使い勝手が悪い」「要件が複雑すぎる」という声があがり続けてきました。一方で財源の観点から要件を厳格化する動きも定期的に出てきます。今後、猶予・免除の条件が変わる可能性は十分あります。
税の世界では「変更が発表されてから動く人」と「変更前に動く人」では、結果が大きく変わります。使える制度は、使えるうちに最大限活用しておく。これが節税の鉄則です。
特例が使えない場合も、手はある
「計画書を出していなかった」という場合でも、あきらめる必要はありません。
生命保険を活用した相続税の納税資金準備、持株会による段階的な株式分散、持株会社スキームを使った株式評価額の圧縮など、状況に応じた代替策は複数あります。大切なのは「特例が使えないとわかった時点で、すぐ代替策に切り替えること」です。何もしないまま時間だけが過ぎていくのが、一番もったいない選択です。
今すぐやること、1つだけ
2027年12月31日まで、今日時点でおよそ1年7ヶ月です。事業承継の準備は、思った以上に時間がかかります。株価の評価タイミング、贈与の分割回数、後継者要件の充足手順——一つひとつ確認しながら進める必要があります。
まずやること、それは事業承継に詳しい税理士へ連絡すること、ただそれだけです。現状を把握したうえで使える選択肢を整理してもらう。それが、億単位の税負担を防ぐための第一歩になります。
まだ何も動いていないなら、今週中に動き出すことを強くおすすめします。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務判断は税理士にご相談ください。